日本最北の中核都市に根ざして40年
在宅医療のエキスパートが巻き起こす新しい風

「中央薬局」北海道旭川市/長塚健太氏

「入りやすい薬局」づくりに向けたひと工夫

 地域における一次予防の場づくりの一環として、健康な方に訪れていただけるよう、長塚さんが薬局にこらした工夫の実際例を紹介します。

① ネーミングとイメージの工夫

「検体測定」は一次予防を初めとする健康サポートに有用ですが、一般の方にはわかりにくいため、旭川中央薬局では「健康チェックステーション」とネーミング。薬局で血糖値やコレステロール値がチェックできることを周知するためステッカーをデザインして店頭に掲示したり、ショップカードを作成して行きつけの美容室や飲食店などにおいてもらったりといったひと工夫をしています。

② 薬局内の雰囲気づくり

待合室はカフェを思わせるデザインに。窓際にカウンターを作って一般の方が仕事もできるよう電源を配置したり、モダンで温かみのある印象を与える商品棚を配置したりしています。

地域とつながる取組み「ケア・カフェ」が進める一次予防の輪

 地域包括ケア推進のもと連携の重要性は広く認知され、地域によって様々な取組みが行われていますが、一次予防の観点からも地域連携は重要です。
旭川中央薬局がスタッフに参加を推奨する、地域で「よい関係」ができる会。名前は「ケア・カフェあさひかわ」といいます。

 毎月1回平日の夜、少なくとも20名程が集まります。6年前に始まって以来2019年11月、開催は80回を超えました。
ケア・カフェでは実行委員が毎回交代で「マスター」としてテーマを決め、参加者が自由に話し合います。

 第3回から参加し、現在は実行委員を務める長塚さん。マスターは医療・介護・福祉職以外の他業種も含まれ、「テーマは『薬』のように医療に関係のある場合や『時間』のように漠然としている場合もあり、多岐にわたります」として、カフェの利点の1つに他業界と交流できる場であることを挙げました。
医療と無関係に話すということは医師・看護師といった「職種」との対話ではなく「●●さんと話す」ことで、個人の価値観をまず知ることになります。価値観の共有から生まれるのは、「その人個人との関係」という顔の見える関係を越えたつながりが生まれる場合もあります。

 また、新しい関係性の中では会話がはずみ、新しいアイデアも生まれやすいと長塚さんは説明します。
「旭川市は広すぎず、僕は土地勘もあるので、ケア・カフェの参加者と話すなかで、あの地域の人だからこんな風につながってこんなことができる、と次の日からでも連携ができます」
と話し、ケア・カフェを介した地域連携の向上を実感しています。

薬局薬剤師としてのやりがいは
かかりつけ薬剤師から「かかる前薬剤師」へ

 一次予防を今後の薬局にとっての使命と捉える長塚さんの考えは「かかりつけ薬剤師からかかる前薬剤師へ」という説明に表れています。
「薬剤師が健康・医療におけるファーストアクセスの医療者となり、必要な時に必要な医療機関へつないでいく。病気になる前から相談を受けてなるべくずっと健康でいていただいて、病気になったら病院につなぎ、処方箋をもってまた来局いただく。そんな業務が僕にとっての薬局薬剤師のやりがいです」

 こうしたやりがいの根底にあるのは、人が本来もっている「健康でいたい」という気持ちを大切にしたいという長塚さんの思いです。
「人は、本当はみんな健康で健やかに過ごしたい気持ちがあると思っています。ですが未病予防に何らかのアクションが必要な方ほど健康診断を受けていないことも。そんな方に声かけしたらすぐ受診されるとは限りませんが、『確かに大事』といった意識付けからでもその方との関係が始まればいいなと思っています」と、「かかる前薬剤師」としての理想のあり方をお話しいただきました。

(取材実施:2019年11月)
編集:学校法人 医学アカデミー