一人薬剤師ながら最大限の在宅医療参画を実践

「たかたみ薬局」神奈川県厚木市/曽根智章氏

立地環境の好転を転機に理想的な薬局像の確立へ

訪問業務を軌道に乗せる一方、もちろん開局時間では当初思い描いていた身近な健康支援にも意欲的で、薬局にはOTC薬や健康食品、衛生雑貨なども豊富に品揃えし、タウン誌で毎月『処方箋・介護・OTC薬販売を3本柱とする街のかかりつけ薬局』として気軽な相談応需を呼びかける広告活動を続けています。

ただ、駅前でも繁華街から外れた立地のために人通りも少なく、処方箋応需も数日間で数枚程度。「面分業で在庫が追いつかず、処方箋を持ち込まれても他の薬局を紹介することが多いですね。そもそも変則的な開局時間から地域支援体制加算も取りにくく、健康サポート薬局の申請といったことも難しいのが悩ましいところです」と説明しながら、曽根氏は「むしろ一人薬剤師でもゆっくり時間をかけて話を聞くことができ、親身な対応によって地道に地域の方々の支持を広げていきたいと考えています」と前向きです。

いずれにせよ、在宅医療・介護のニーズが高まってくれば一人薬剤師のままでは対応が追いつかなくなるとし、一定の実績が得られてきたことで曽根氏は薬剤師の雇用を検討し始めています。また、薬局の周辺に大型商業施設やマンションが建設される計画が進んでおり、ここ数年以内に立地環境が劇的に好転する機運も高まっているそうです。

「より地域に薬局が知られる転機と捉えており、それまでに薬剤師を雇用して体制を強化し、今後の地域社会に求められる理想的な健康サポート薬局としての活動に乗り出したいですね。訪問業務で患者さんの生活の場を見ていることも様々な健康支援のヒントになると感じていますし、経験は勤務時代に充分あるので来て頂けさえすれば色々なことができる自信はあります」。一人で地域に出ていくところからスタートした曽根氏の薬局経営は、地域に欠かせない存在感へと一気に突き進みつつあります。

(取材実施:2019年2月)
編集:薬局新聞社