一人薬剤師ながら最大限の在宅医療参画を実践

「たかたみ薬局」神奈川県厚木市/曽根智章氏

神奈川県のちょうど真ん中辺りに位置する厚木市の中心部、小田急電鉄・本厚木駅から徒歩5分の生活道路沿いにある『たかたみ薬局』は、いわゆる一人薬剤師の薬局にして2014年の開業時から在宅医療の訪問業務を柱とする特徴的な営業形態をとっています。経営者の曽根智章氏は、勤めていた薬局から独立開業する際、その薬局が担当していた介護施設の居宅療養管理指導を引き継いだことがきっかけで、まさにたった一人で地域の薬局による在宅医療参画を牽引しています。

「いつか自分で薬局を持ちたいと勤務経験を積むなかで、当初は漠然と調剤やOTC薬による身近な健康支援を考えていましたが、独立を前提に勤務した近隣の薬局で在宅医療・介護を支える業務を経験し、今後この地域に最も必要なことと実感しました。本当に良いタイミングとめぐり合わせだったと思います」と、曽根氏は振り返ります。

勤務時代から曽根氏が自宅を構える厚木市は、東京・横浜の衛星都市として整備されてきたことから、「団塊の世代が作り上げた街」になっていると言います。「それにも関わらず、在宅医療・介護という面で厚木市は後進地。まだ訪問診療自体が他の地域に比べて少ないのが実情で、このままだと医療過疎に陥りかねません。間違いなく需要が急増する5年後10年後を見据え、積極的に在宅医療や介護の現場に出ていくことで薬局薬剤師の立場からも働きかけたいと考えています」。

そんな熱意と意欲のもと、一人薬剤師状態で在宅医療を行うために曽根氏は開局時間を月・火・水曜日は9時~12時、金曜日は9時~10時および16時~18時、土曜日は9~13時(木・日・祝日定休)と設定し、営業時間外を患者さん宅や施設の訪問時間に充てられるように工夫。最初の施設を足掛かりに地域医療での存在感を高めることで、開業5年目には3施設・100人規模に居宅療養管理指導先を拡大し、30人の在宅患者訪問薬剤管理指導もこなしています。

「日中は2時間で4件ほど回れており、施設については予め薬セットを揃えて週末にまとめて行く形です」。片道30分程度・半径16km圏内を目安として効率的に計画しているそうですが、訪問に使う軽自動車の走行距離は月1000kmにも達します。「これ以上の数になった時は帰宅もままならなかったことから、変則的な営業形態でも現状ほぼ手一杯ですね」と、一人薬剤師の薬局ながら最大限の訪問業務を実践しています。