薬局における検体測定の草分けとして、地域の一次予防を担う機能と役割を追求

「二十四軒薬局」 北海道札幌市/高市和之氏

薬局の薬剤師は地域で最も一次予防に近い専門家

 まだ薬局での検体測定室が普及しているとは言えない状況ながら、高市氏は「検体測定室の運営自体は必ずしも薬局である必要はなく、業者に頼んだり地域で協働しても構いません。日頃の数値管理や一次予防の意識が広がっていけば、最終的には身近な薬局・薬剤師の活躍の場が増えると考えています」とのスタンスを説明します。「地域医療に一次予防の指導者がいないという実態に気付いたことも、僕が血糖値測定器を薬局に取り入れた大きな背景です。医療・調剤からOTC薬、生活習慣、栄養・サプリメントなど健康に関わる食品の知識があり、物流を受け持つ薬局の薬剤師が地域で最も一次予防に近い専門家になれるはずです」。

 高市氏は薬局での検体測定やヘルスチェック提案と並行し、地域の栄養士らと健康食品の評価や情報交換を行う研究会活動も行うなど、一次予防に活用できる健康食品の検討にも力を入れ、サプリメントアドバイザー資格を持つ薬剤師や栄養士が適切な提案や指導を図る体制を整えています。「サプリメントの活用でも自分の状態を調べ、管理することが大切です。自己決定には自分で測定することが必要で、端的に言えば体重計に乗ることでダイエットサプリメントについて判断できるわけです」と、栄養や機能性食品の側面からも一次予防の意識付けに関与していく必要性を強調します。

 顧客の高齢化に対しては、介護用品などの取扱いを拡充し、在宅医療にも乗り出しています。「高度な対応が必要になれば他の薬局を紹介しますが、患者さんが自宅療養に入れば自然と対応する感じです。薬局はプライマリケアから在宅まで、その人の段階に応じて総合的に支援していく拠点を目指すべきと感じています」。四〜五次予防とも呼べる、これらの活動は、薬局の新局面となる可能性を秘めています。

 これらの考え方から、「健康サポート薬局」について高市氏は「お薬手帳の推進と同じように、要件を満たすことが目的にならないようにしなければ」と気を引き締めます。「薬物療法の専門家だから処方箋がなければ対応しないということではなく、プライマリケアとして一次予防の段階からかかわっていく姿勢が今後の薬局に求められていると思います。検体測定室も『やれば処方箋が増える』といった発想ではうまくいきません。『一次予防でどれだけ救えたか』という成果を糧に、薬局中心の発想を変えるだけの手応えが広がればと願っています」という、その言葉は、先駆者としての実績に応じた重みがあります。

(取材実施:2017年6月)
編集:薬局新聞社