薬局における検体測定の草分けとして、地域の一次予防を担う機能と役割を追求

「二十四軒薬局」 北海道札幌市/高市和之氏

 「健康サポート薬局」制度への取り組みにより、検体測定室への関心が改めて高まっていますが、札幌市郊外の二十四軒薬局は、制度化以前の30年以上も前から検体測定を行ってきた、全国でも先駆的な薬局の1つです。常設のヘモグロビンA1cや中性脂肪、LDL・HDLコレステロールを対象とした検体測定室のほか、血糖値測定器や日常行動記録計なども取扱い、糖尿病の自己管理に対する啓発や情報提供も積極的に実施。さらに呼吸機能・肺活量検査機器、口腔内RDテストといった様々なヘルスチェック機器を揃えるなど、地域の一次予防拠点となっています。

 「ストレス管理につながる唾液アミラーゼモニターなど、小型で安価な機器類が増えており、薬局が地域の一次予防の窓口としての役割を発揮する可能性が高まっていると思います」と、経営者で管理薬剤師の高市和之氏は取り組みの実感を込めて語ります。実際に高市氏は薬局での日常的な健康管理対応の延長線上で、地域の施設やお年寄りの集まりなどで健康に関する講演を依頼されるほか、地元医師会や看護師、栄養士らと毎年共催する健康フェアでも検体測定を実施するなど、一次予防を切り口として精力的に地域へ働きかけています。

 もともと二十四軒薬局は、高市氏が長年勤務していた地元チェーン薬局の店舗を事業承継したもの。集合住宅や公設市場に隣接する札幌市営地下鉄駅前という好立地から、以前はOTC薬や健康食品が主体でしたが、独立の際、医薬分業の進展に伴って段階的に保険調剤を強化してきたことにより、面分業対応とヘルスケアの相談販売を両立する理想的な薬局経営を推進してきました。「売上では調剤が9割を占めていますが、馴染みの地域の方々を中心に患者と顧客の割合では半々ぐらい」という業務内容的にも、地域で健康支援に働きかけやすい存在です。

 地域・患者との密接な距離感を象徴するものに、薬局オリジナルのお薬手帳カバーの展開があげられます。「単に『お薬手帳を持ちましょう』では、点数のための薬局側の理屈。『どうすれば患者さんが自分にとって大切なものとして使ってもらえるか』という意識から提案すべきと考えました」と、愛着が湧くよう、牛革製などの立派なカバーを製作しました。さらにお客さんの意見や要望を聞いているうちに手芸が得意な患者から作品が寄せられるようになり、現在では3人の“お薬手帳ケース作家”によるバラエティー豊かなお薬手帳カバーを販売しています。