薬局における検体測定の草分けとして、地域の一次予防を担う機能と役割を追求

「二十四軒薬局」 北海道札幌市/高市和之氏

先駆的活動で得た経験と実感に基づく「薬局が一次予防に取り組む意義」

 「そもそも検体測定などによる一次予防は、調剤・医療とは別の視点が必要です。医療が始まるのは病気になった第三次予防からですが、薬局は健康な時からでも顧客になってもらえ、健康と病気の境目の段階から関与できるという意義は大きい」と高市氏。検体測定に着目したのもヘルスケア中心の取り組みを行っていた頃で、疲れや喉の渇きを訴えてドリンク剤などを買いに来る顧客と接するうち、『ひょっとしたら糖尿病なのでは』と疑い、問題意識が芽生えたことがきっかけだったと言います。

 「そんな人たちに病院で血糖値を測ってもらうと大幅に基準値を超えていました。このことから、糖尿病治療は症状が出てきた場合に限定した対応で、患者の多くが放置されているのではないかと考えるようになりました。そこで病院で糖尿病患者の三次予防に使われ始めていた自己血糖値測定器を薬局に導入し、店頭で一次予防的に用いることを思い立ちました」。

 当時は薬局での検体測定が法的にも制度的にも確立されておらず、様々な方面から忠告や指摘を受けました。それでも「怪しいと感じた顧客に測定を促したところ極端な血糖値で、すぐ病院に行ってもらったところ、実は心筋梗塞を起こしていた」というケースを体験したのです。高市氏は潜在的な糖尿病の実態と一次予防の重要性を確信し、「手応えとともに応援してくれる賛同者や薬局・薬剤師の仲間も増え、一緒に試行錯誤しながら活動の幅を広げていくことができました」と振り返ります。

 こうした経緯は地域の薬局を中心とした健康支援サービスの環境作りに取り組む『一般社団法人スマートヘルスケア協会』設立へと発展しました。高市氏は理事の1人として先駆的活動で培った経験やノウハウを通じ、薬局における検体測定室の展開を牽引する活動にも力を尽くしています。

 厚生労働省の検体測定室に関するガイドラインにおいて、測定室担当者の測定値に対する助言が制限されることが現場での課題と指摘されていますが、協会内での検討も踏まえ、高市氏は「診断をしなければ専門家としてのアドバイスは問題ないはずですし、そうでなければやる意味がない」と力説します。二十四軒薬局では測定項目ごとに基準値と受診勧奨値をわかりやすく一覧表にし、測定結果が出るまでに客観的な測定値のとらえ方を伝えるようにしています。「要は手順的なことに過ぎません。結果をストレートに話すと、確かに脅かすような構図になりかねませんが、あらかじめ『この数値を超えた場合は受診をお勧めすることになります』と言っておくとスムーズで、例えば基準値と受診勧奨の間の値であれば『少なくとも健康な状態とは言いにくいですよね』などと話すことで一次予防に十分役立つと思います」。