薬局における薬剤師の可能性を模索し、常に地域の患者・利用者と寄り添う健康支援の拠点

「つちばし薬局」 高知県高知市/藤原英憲氏

点数目的ではない本当の意味での治療支援の提案を

 藤原さんは日本薬剤師会の執行部にいたころから、薬局におけるセルフメディケーションの重要性を訴えてきました。その背景には先代から続いてきた地域社会に寄り添う姿勢があります。「処方箋調剤であってもセルフメディケーションの要素は非常に多く眠っていると感じています。薬局には要指導・一般用医薬品等の他にも敏感肌用化粧品や医療雑貨、特別な用途に使う食品など約2500アイテムを陳列しています。

 例えば、医師の診断結果をサポートするような提案です。膝が痛いので痛み止めと関連治療薬を処方された方には、薬剤師が持っている知識を発揮して、膝の筋肉をつける簡単な運動の提案や適切なサポーターを紹介することなどで、多角的なフォローが可能になると思います」と強調します。重要なのは「関わりを持とうする姿勢」であると言葉を続け、医療関係者が情報を提供することで患者さんが“自分でもやってみよう”と思っていただけたことが、セルフメディケーションのスタートであると話します。

 2015年に公表された『患者のための薬局ビジョン』や『健康サポート薬局』についても、地域の薬局カウンターから危機感を感じ取っていると言います。「薬局の薬剤師さんに話しかけたら『それは先生(医師)に聞いてください』と言われたという方がいらして、非常に残念な気分になりました。国から示された今回の提案は、こうした状況に対する一種の答えではないでしょうか。今の薬剤師には足りていない部分が少なくないということだと思います」と話す姿には、現場で生活者と真摯に向き合ってきたことへのプライドが滲みます。

 「薬剤師にとって患者さんに提供する医薬品などは、ひとつのツールだと思います。薬剤師は医薬品の専門家ですが、薬を出すだけの人ではない」との考えを打ち出し、このような事例を説明してくれました。

 「痛み止めを処方された方が来局して、詳しく話を聞いたところ、親知らずを抜歯したとのことでした。歯が痛くて満足に食事もできないとの訴えでしたので、ユニバーサルデザインフードの使用を提案しました。噛む力の目安が選べてしっかりと栄養も摂れ、何より食べることができるのでストレスが軽減できます。薬局に特徴のある色々な製品を置くことでこうした提案ができますし、こうしたアプローチは薬局しかできないことではないでしょうか。

 全国の多くの薬局でこのような提案が採用されれば、患者さんや利用者の方から『地域のこの薬局・薬剤師さんは相談できるな』と感じていただくことができ、それが健康サポート薬局の根底になるのではないでしょうか」と語ります。