薬局における薬剤師の可能性を模索し、常に地域の患者・利用者と寄り添う健康支援の拠点

「つちばし薬局」 高知県高知市/藤原英憲氏

 高知県は、坂本龍馬をはじめとする明治維新の主要人物を輩出したことから、観光としての歴史探訪が人気となっています。近代日本の先駆けを感じることができる観光スポットが多数点在する高知市に、今回訪れたつちばし薬局は店舗を構えています。

 昭和28年に創業し、今年で64年目を迎える地域の老舗薬局です。話を伺った藤原英憲さんの親御さんが高知市内に実在した「つちばし」という橋の近くに開設したことから「つちばし薬局」と名乗ったと振り返ります。開業当時から掲げるモットーは、「常に利用者の健康を考えて、疾病の予防から解決策まで提案できること」。現在、国から提唱されているかかりつけ薬剤師・薬局を、古くから実践していると言えます。

 藤原さんは接遇方針について「例えば処方箋調剤の患者さんに対しては、服薬指導や薬に関する問題点を確認するとともに『服用薬以外に関する身体の体調に関しての不安や問題はありませんか?』などの声掛けを行い、少しでもその方の健康づくりに関与していくことが薬剤師の重要な役割であると考えています」と説明します。「常に患者さん本人の身体状況全体を捉え、疾病の重症化予防などの提案だけでなく、色々な問題に気づいてあげられるのか? そのためにはどのようなアプローチや解決策が有効かについて思いを巡らせている」と言います。

 例えば、COPDの患者さんにリハビリの重要性を話して理学療法士の方から得られた「自宅で行える呼吸リハビリ方法」の情報などを図柄にしたものを渡して疾病の進行を少しでも抑えるよう伝えるようにしています。

 また、健康づくりにおいてはセルフメディケーション支援で対応できないと判断した時は積極的に医師などへの紹介状を持たせ、受診させるように心がけており、受診した医療機関からは診療情報提供書が送られてきており、そのような医・薬連携関係が30年以上も続いています。

 こうした理念は、当然のことながらスタッフ全員に共有されてこそで、「スタッフを採用する段階で、『薬剤師は処方箋調剤だけをする薬局ではないことや医療事務者にも積極的に登録販売者になってもらうこと』を伝えています。これは理念を共有することに留まらず、会社が主催する勉強会に主体的に参加し、誰もがテーマ発表まで行うことを求めているからです」と語るなど、研鑽を重ねる姿勢を求めていることが根底にあると言葉を続けます。

 こうした姿勢が地域から高く評価されていることを裏付けるのが、利用者の方の幅広さです。いわゆる門前薬局やマンツーマン薬局ではないため、多くのお客は地域の職場や住まいの方が約半分ですが、「昔から薬局を利用してくれていた方が、わざわざタクシーや公共の交通機関などで遠方から来てくださる方も半分はいます。その方が利用している医療機関の前には門前薬局があるにも関わらず、来ていただけることは申し訳ないと思う一方、本当に嬉しいですね」と笑顔を浮かべる姿には、ファンを作っていることへの自負も垣間見えます。