門前立地でかかりつけ薬局の存在感を打ち出すベテラン薬剤師!

「スズキ薬局」広島県広島市/鈴木荘司氏

時代の移り変わりや環境変化に左右されない薬局哲学

「閉店後にお客が来たからと両親が食事の手を止め、普通に店を開けて対応するような姿を見て育った世代。今なら『開店時間内に来て下さい』となるところかも知れませんが、かつてはそれが薬局の当たり前でした」。病院や院内の売店で手に入る衛生用品などは本来、病院が閉まっている時間帯にしか売れないものですが、言い換えれば閉まっている時にニーズが強まることを意味します。「週末に急患が続いた時など、年に20枚ほどしか売れないT字帯が3日で30枚も売れたことがありましたね」。

言うまでもなく、それはOTC薬も同じです。むしろ処方せんが無くても買えるOTC薬の取扱いを店先でアピールするのは、実は病院門前なりの環境も踏まえたものともなっています。「病院周辺では身内や親しい人が病気で不安を抱えていたり、看病疲れから心身が滅入っている人が多い。栄養剤や保健薬を提案しながら『看病するためにもなるべく無理をしないように』と声をかけ、少しでも気持ちが和らぐ対応を心がけています」。こうして処方せんに関わらず気軽に相談できるという状況こそ、先に触れた『開いている』ということだけで安心感を表現するという鈴木氏なりの薬局哲学であり、ベテラン開局薬剤師としての自信を裏付けています。

経営効率を考えると調剤だけに集中するほうが良いのは当然のこと。「しかし、昔からのお客も付いていますし、何かあればすぐ病院を頼る人も居れば、なるべく身近な薬局に相談したい人もあります」と、鈴木氏は薬剤師が主体的に対応できるOTC薬などは“決して薬局から切り離してはならないもの”と強調します。

「最近は薬局の役割として受診勧奨が叫ばれています。適切な判断は言うまでもありませんが、お客や患者の相談に正面から向き合う知識や経験がないからと薬剤師がそれを“逃げ”に使うような風潮になることが心配です」。

もし話を充分聞いてもらえず安易に病院へ振るような対応を感じ、薬も得られないとなると2度とその人は薬局へ相談に来なくなってしまう――。「何かと病院を頼りにするような人にOTC薬を勧めるのは難しいですが、まずは薬局で相談したいという人を失望させることは自分達の存在意義に関わります」との鈴木氏の指摘は、処方せんが無ければ用はないとも揶揄される昨今の薬局をめぐる実情にあって説得力と危機感を感じさせます。