「なごみ薬局」東京都中野区/渡邊 輝氏
渡邊さんは処方箋アプリ「メディカルペイ」を開発しました。同様のアプリは複数リリースされていますが、メディカルペイは患者さんとのコミュニケーション機能が特徴的です。
● 事前に処方箋情報を送信し、できあがりの状況も確認可能
● 銀行振込(10月よりd払い対応)ができ薬局での会計が省略可能
● 電子お薬手帳が付いており、非接触で共有できるため感染対策可能
● 薬局におけるアンケート、電子手帳の事前確認が可能なため、待ち時間減少
● 薬局まで道順、薬局の採用薬を来店前に調べられる
● 薬剤師とワンタップでオンライン服薬指導が可能
● 薬にまつわるニュースを表示
● チャット機能で在庫確認や事前に伝えたいこと、相談などがリアルタイムで可能
メディカルペイを活用するメリットには患者負担・感染リスクの低減などが挙げられますが、渡邊さん自身はアプリの目的を「信頼関係の構築」と設定しています。負担やリスクを抑えながらコミュニケーションを促進することで、薬剤師の本来業務であるケアやアドバイスをより患者さんに寄り添ったかたちで実施できると考えています。
薬局に関わるデータは多岐にわたり、同薬局ではこれらを統計解析し、生産性の向上や業務の効率化に役立てています。
「一見別のデータ同士相関関係があるケースがあり、データマイニング等の手法を用いると、気温の変動と業務量の関連性などがみえる場合があります」と渡邊さんは説明。季節ごとの在庫最適化や患者さんの待ち時間を踏まえたシフト管理などに役立てています。
同薬局では調剤ロボットを導入しています。ROI(Return on Inverstment:投資回収率)を計算し、5年ベースで生産性の向上効果を検討した結果の導入でした。
実際に使用する過程で、生産性が向上するだけでなく調剤過誤が顕著に減少したことがわかりました。
ITテクノロジーの活用により効率性、生産性が向上した結果、同薬局では業務において自己研鑽や薬剤師の専門性を活用した対人業務がいっそう推進されつつあります。
実際例として、同薬局薬剤師で卒後3年目になる柴みのりさんは、在宅医療におけるポリファーマシーへの取組みを挙げます。
自己研鑽を推奨する社内方針に後押しされ参加した学会で、柴さんは日常業務に対して「処方意図をすべて理解し調剤・服薬指導しているか?」という問いを得ます。特別養護老人ホームを担当する柴さんは、一つひとつの処方に「本当に必要か」と検討する視点をもつようになりました。
「担当患者さんの中には意思表示が困難なかたもいらっしゃいます。薬に関する問題があれば、薬剤師が必要と考えました」と話す柴さんは、ホームの処方に関するポリファーマシーをテーマに、クリニカルクエスチョン(臨床で気づいた疑問)をリサーチクエスチョン(研究における課題)に発展させ、自身で研究を始めました。
現在、柴さんは研究を進めるとともに成果を臨床に還元していくことで薬剤師業務のエビデンスを構築中。こうして意欲的に研鑽を重ねる薬剤師一人ひとりが今の「なごみ薬局」をつくりあげています。