TOPICS

現場で役立つ「健康食品」の知識

薬剤師トレンドBOX#37

topics

患者さんから健康食品に関する質問を受けて、うまく答えられなかったことはありませんか。 いわゆる健康食品にはいくつかの区分がありますが、それを正しく理解している方は少ないかもしれません。 今回は、薬局やドラッグストアで役立つ健康食品に関する知識・トピックをご紹介します。

健康食品とは

一般的に“健康によいとされる食品全般”のことを健康食品とよび、 その中でも医薬品と同じような形状(錠剤・カプセル・粉末・液剤等)のものはサプリメントとよばれています。 また、個人が健康のために摂っている食品を健康食品ということもできます。

なぜこのようにあいまいな表現なのかというと、日本には健康食品について定めた法律がないからです。 医薬品には医薬品医療機器等法、食品であれば食品衛生法に定義がありますが、「健康食品」という言葉を定義している法律はありません。 患者さんとの会話の中で、思い違いが起こらないよう、健康食品について正しく理解しておくことが大切です。

機能性を表示できるのは保健機能食品だけ

食品には、原則として医薬品的な効能・効果や身体機能に影響を及ぼすような表示をすることは認められていません。 その中で、保健機能食品だけには、限定的な機能性の表示が認められています。

保健機能食品の分類とその特徴
分類 表示の対象 国の審査 届け出 特徴
特定保健用食品(トクホ) 摂取により、特定の保健の目的が期待できる食品 必要 必要(企業が科学的根拠を提出する届け出制) 表示できるマークがある
栄養機能食品 ビタミンやミネラルなど指定の栄養成分を基準量含む食品 不要 不要 国が定めた表現に沿って表示
機能性表示食品 生鮮食品を含む全ての食品(一部対象外あり) 不要 必要 企業の責任で機能性を表示

保健機能食品には特定保健用食品(以下トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品の3種類があります。 いずれも国が定めた安全性や有効性に関する基準等に従って食品の機能が表示されていますが、 疾病の治療や予防のために摂取するものではありません。

特定保健用食品(トクホ)

CMなどでも目にするトクホとして許可された食品は、2023年2月20日時点で1,062品目あります。 また、2021年度の調査結果では252品目が実際に販売されています。

トクホは、有効性・安全性・品質などの科学的根拠とともに申請され、 国の厳正な審査・評価のもとに許可を受けています。また、トクホは許可の区分によって分類されています。

消費者庁資料より引用改変

● トクホをおススメする際の注意点

トクホは製品ごとに消費者庁長官の許可を受けていますが、その保健機能(効果)は病気の治療を目的としたものではありません。 例えば、血圧が高めの方に適したトクホ製品であっても、高血圧症の治療では使用できません。 しかし、高血圧症の患者さんや治療を必要とする人の中には、高血圧症を改善するために使用している人もいるので、注意しましょう。

また、トクホは食べたり飲んだりしてすぐに効果が表れるものではない上に、期待される効果が得られるまでに必要な期間はパッケージに記載されていません。 それぞれの機能を理解し、患者さんに説明できるようにしておくとよいでしょう。

栄養機能食品

栄養機能食品は、ビタミンやミネラルなど国が定めた特定の栄養成分(20種類)の補給・補完を目的とした食品のことです。 栄養機能食品として販売するためには、上記栄養成分の1日あたりの摂取目安量が、国が定めた下限・上限値の基準に適合している必要があります。 また、栄養成分の機能表示とともに、摂取する上での注意事項を表示するように定められています。 ただし、国による審査や許可、事前の届出は不要です。

● 栄養機能食品をおススメする際の注意点

栄養機能食品は、不足している栄養素を補う場合には効果を期待できますが、普段の食事で補えている方にとっては不要です。 また、栄養素摂取の補助を目的とされる方に対し、 OTC医薬品、医薬部外品、栄養機能食品、あるいはいわゆる健康食品の中から何をおススメするのかを判断する必要があります。 その判断のためには、日頃から各製品の特徴を理解しておくことが大切です。

機能性表示食品

機能性表示食品の制度化以前は、機能性を表示できる食品は、国が個別に許可したトクホと、国の規格基準に適合した栄養機能食品だけでした。そこで、機能性がわかりやすく表示された製品を加え、消費者の選択肢を増やす目的で2015年4月に機能性表示食品制度がはじまりました。

機能性表示食品の年度別届出数(2023年2月20日時点)
届出数 既撤回数 販売中
2015年度 307 114 83
2016年度 620 180 166
2017年度 452 97 165
2018年度 690 103 274
2019年度 882 63 453
2020年度 1,067 44 613
2021年度 1,445 20 874
2022年度 998 10 219
6,461 631 2,847
機能性表示食品の届出情報検索(消費者庁HP)より算出

比較的新しい制度ですが、その届出件数は年々増え、既に6,000品目を大きく超えています。 この数は、1991年に制度化されたトクホの許可品目数と比べると約6倍になります。
また、主に届け出られている機能性としては、「脂肪を減らしBMI値を下げる」「睡眠の質の向上」「血糖値の上昇を抑える」などがあります。

● 機能性表示食品をおススメする際の注意点

機能性表示食品は、事業者が自らの責任で、食品の安全性・機能性の科学的根拠を示した食品です。 販売の3か月前までに届け出ることになっていますが、消費者庁では内容についての審査を行っておらず、 ほとんどの製品において臨床試験による検討・実証もされていないため、注意が必要です。

ただし、届け出られた資料については、企業秘密に関する情報以外は全て消費者庁のWEBサイトで閲覧可能となっています。 そこでは、機能性関与成分名はもちろん、1日の摂取目安量や摂取する上での注意事項なども確認できるので、おススメする前に確認・把握しておくとよいですね。
機能性表示食品の届出情報検索

健康食品について理解して対応しましょう

薬剤師として理解しておきたいのは、健康食品は医薬品とは違い、安全性と有効性の科学的根拠が示されていないものもあるということです。
また、健康食品で「病気が治る」と思っている人が意外と多いことも心得ておく必要があります。

“健康”食品という言葉から、健康になる食べ物とイメージしている人もいますが、目安量を超えて摂取すると健康被害につながる可能性もあります。 薬剤師として製品ごとの特徴を把握し、成分含有量をチェックしたり使用目的のヒアリングをしたりと、安易におススメせず適切な健康食品の販売を心がけましょう。

(2023年4月掲載)
編集:学校法人 医学アカデミー

トップページ