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不妊治療

―2022年4月からはじまった保険適用―

薬剤師トレンドBOX#32

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不妊治療の保険適用が2022年4月からスタートしました。子供を望む男女の経済的負担を軽減し、全世代型の社会保障を実現する一環として行われるものです。今回は、保険適用となる要件などをご紹介します。

5.5組に1組は不妊治療を受ける時代!

国立社会保障・人口問題研究所によると、日本では5.5組に1組は不妊治療の経験があります。不妊というのは子供を望む男女にとってごくあたりまえに起こりうることです。その一方で、これまでは不妊治療は自費診療がメインであったことから、男女にとって経済的に大きな負担となっていました。

そのため厚生労働省は、これまで不妊治療に対して助成金という形で経済的負担の軽減を図ってきました。2004年に助成金の制度が創設されてから支給実績は年々増え続け、2004年には17,657件でしたが、2020年には135,480件まで増えています。助成金制度が充実する一方で、晩婚化などを背景に不妊治療を必要とする男女の数も増え続けています。

そこで、不妊治療を受ける男女の経済的負担を軽減し、全世代型の社会保障の一助とするために、2022年4月から不妊治療の保険適用がはじまりました。これまでの助成金と同様に年齢や回数に一定の制限を設けた上で、不妊治療の基本的治療は全て保険適用となるのが特徴です。

体外受精などの基本治療は全て保険適用に

社会保険医療協議会などの各種審議会で審議した結果、関係のガイドラインなどで有効性・安全性が確認された次の治療については、保険の対象となります。

● 一般不妊治療法

タイミング法、人工授精

● 生殖補助医療

採卵・採精、体外受精・顕微授精、受精卵・胚培養、胚凍結保存、胚移植、男性不妊の手術

タイミング法とは、排卵のタイミングにあわせて性交の指導をすることで、人工授精は注入器で直接子宮に精液を注入する方法です。これらは一般不妊治療の領域です。それに対して生殖補助医療には、精子と卵子を体外で受精させて子宮へ戻す体外受精や、体外受精の中でも卵子に注射針で精子を注入するなど、人工的に受精させる顕微授精などがあてはまります。また、射精が困難な場合に手術用顕微鏡を用いて、精子を回収する技術なども生殖補助医療の1つです。

なお、生殖補助医療のうち、これらに加えて実施されることのある「オプション治療」についても、保険適用されたり「先進医療」として保険と併用できるものもあります。先進医療とは、保険外の先進的な技術として認められたものであり、例外的に保険診療と組み合わせて実施することができる治療法です。

保険適用とされるものには、体外受精・顕微授精の際にオプション治療として用いられる卵子の活性化、胚移植の際にオプション治療として用いられるアシステッドハッチング、高濃度ヒアルロン酸含有培養液などがあります。このほか先進医療の対象となるものは、受精卵の培養状態を評価するタイムプラス、培養液を子宮に注入して着床を促すSEET(シート)法などがあります(2022年4月現在)。

保険適用の対象となる年齢と回数の要件
● 年齢制限

治療開始時において、女性の年齢が43歳未満であること

● 回数制限
  • 初めての治療開始時点の女性の年齢が40歳未満
    ……回数の上限は1子につき通算6回まで
  • 初めての治療開始時点の女性の年齢が40歳以上43歳未満
    ……回数の上限は1子につき通算3回まで

新たに6成分16品目が薬価収載

不妊治療が保険適用となったことに伴って、不妊治療に用いる新たな薬も薬価収載されました。2022年4月1日付けで薬価収載されたのは新薬6成分16品目で、内訳は内用薬が2成分7品目、注射薬が3成分5品目、外用薬が1成分4品目です。

不妊治療が保険適用となったことによって、患者の窓口負担は3割になります。同時に、治療費が高額になった場合、一定限度額以上は払い戻される高額療養費制度も使うことができます。これによって、不妊治療が必要な男女の経済的負担が軽減されることが期待されます。日本産科婦人科学会によれば、不妊治療で生まれた子供は6万人を超えました。不妊治療の保険適用で子供を望む男女が子供をもつことができれば、少子化に歯止めをかける一助となるかもしれません。

(2022年7月掲載)
編集:学校法人 医学アカデミー

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