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アンチエイジングに役立つ知識と資格

―「年を重ねるごとによい人生」を応援するために―

薬剤師トレンドBOX#20

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セルフメディケーション支援に対する薬局への期待がいっそう高まる今後。
特に中高年の方の健康相談に対応する機会は数多くあるでしょう。
今回は薬剤師がサポートするアンチエイジングにフォーカス。
「年を重ねるごとによい人生」を応援するための基礎知識と
かかりつけ薬剤師としての健康支援に役立つ資格をご紹介します。

医療におけるアンチエイジング

ヒトにおける老化のメカニズムはまだエビデンスが確立されていないものの、近年研究が進み、活性酸素をはじめとするいくつかの要因が明らかになりつつあります。

老化の要因例:活性酸素

体内に取り入れた酸素の数パーセントが活性化されて生じる。免疫機能や感染防御、細胞間のシグナル伝達、排卵、受精、細胞の分化・アポトーシスなどの生理活性物質として利用されるが、過剰な状態においてはがん細胞の発生や内分泌系・循環器系などの機能低下の要因となる。

  • 加齢により活性酸素の代謝能が低下 ↓
  • ニコチン、激しい運動、アルコール、紫外線など
    外的ストレスによって増加 ↑

【 アンチエイジングの具体例 】

活性酸素の不適切な増加の要因となるアルコールやたばこ、紫外線といった外的ストレスを避け、適度な運動を実施するとともに、ビタミンC、ビタミンE、カロテノイド類、カテキン類といった活性酸素の代謝を促進する栄養素を取り入れた食生活を実施。

出典:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト

医療におけるアンチエイジングの定義を抗加齢(アンチエイジング)医学会のウェブサイトからご紹介します。

アンチエイジング医学とは
元気で長寿を享受することを目指す理論的・実践的科学である

出典:抗加齢医学会ウェブサイト

つまり、アンチエイジング医学は単なる寿命の延伸にとどまらない、健康寿命の延伸が目的といえるでしょう。日本人の平均寿命と健康寿命の差、つまり医療や介護を必要とする時間は約10年(2016年厚生労働省調査によると男性8.84年、女性12.35年)。この10年を短くするために必須の医療です。

加齢により起きる変化は認知能や言語能、免疫系、感覚器系、循環器系、内分泌系など多岐にわたり、個別性が高いことが特徴です。アンチエイジングという言葉に対して皮膚のしわや毛髪など外見の整容が想起されるかもしれません。しかし実際必要なのは、体質や生活習慣といった総合的な視点も加味した心身機能の変化全般への対応となります。

加齢により起きる主な変化

脳・神経系 認知機能、体性神経・自律神経の機能低下
感覚器 難聴、視力低下、味覚・嗅覚低下
骨・筋 骨粗鬆症、サルコペニア
循環器 動脈硬化、不整脈、心肥大
内分泌系 自律神経の失調による諸症状
免疫系 易感染性

健康長寿ネットを参考に作成

加齢変化への対応は、従来の臓器(診療科)別に均一化された検査・治療と異なり、各専門領域を横断した個別性の高いアプローチが求められます。アンチエイジング医療は未病対策・予防において中心的な専門領域となる可能性もあるでしょう。

※注釈:アンチエイジングは診療科名としては認められていない

出典:医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告し得る事項等及び広告適正化 のための指導等に関する指針(医療広告ガイドライン(仮称) 2018年版)

かかりつけ薬剤師としての
アンチエイジング支援に役立つ資格

抗加齢指導士という資格をご存知でしょうか?

抗加齢医学会が認定する資格で、薬剤師を含めたさまざまな医療従事者が取得可能です。アンチエイジングを通じて加齢が影響するさまざまな疾患を予防することが目的です。

アンチエイジングには薬学・医学だけでなく、アロマや鍼灸などの補完代替療法や、食事療法・運動療法といったさまざまな方策が存在します。かかりつけ薬剤師として健康相談に対応する際は、生活背景や体質などを踏まえて総合的に情報収集し、ふさわしい方策を検討する必要があります。

抗加齢指導士は資格取得を通じて、発展し続けるアンチエイジング領域における正しい知識と最新情報を得ることができ、多様で個別性の高い加齢変化を捉えて健康をサポートするのに役立ちます。

また、薬局で健康相談をされる方にとってはアンチエイジングの正しい知識をもった専門家である証明になり、より安心して相談することができるでしょう。

昨今のトピックス「アンチエイジングドッグ」

加齢による変化は生活の中で緩やかに始まり、気づきにくいうえ大きな個人差があります。近年みられるようになった「アンチエイジングドッグ」は、セルフメディケーション支援に役立つひとつの方法です。従来の人間ドックに加え加齢変化のさまざまな兆候を見つけるための検査を受けられます。

アンチエイジングドックの検査項目例

  • 血管年齢
  • 脳年齢
  • 骨年齢
  • ホルモン年齢
  • 筋年齢

それぞれ「年齢」として出力し、実年齢と比較し老化度を評価。
検査結果に基づき、抗加齢指導師などの専門家が食事やサプリ、運動療法などを指導。

抗加齢指導士ができる指導例

まとめ

アンチエイジングドッグは検査によって数値化はできますが、評価と判断は医療者にゆだねられます。また、患者さんに寄り添い話を伺うことで、生活習慣など現在の数値に現れないものの検討するべきポイントを見出すことも、医療者でなければできません。

健康とは、「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること(WHO定義)」といえます。

健康寿命の延伸を目的とするアンチエイジング医療には、未病対策・予防の支援から始まり、何かの病気にかかってからも幸せにその地域で最後まで生活を続けるためのサポートが期待されています。

(2020年2月掲載)
編集:学校法人 医学アカデミー

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