TOPICS

薬局の在宅医療参画で介護環境改善にも貢献!

介護現場が期待する薬剤師の位置付けとは

薬剤師トレンドBOX#14

topics

 2018年度の調剤報酬改定では、基準調剤加算が地域支援体制加算に転換されました。このことからも薬局薬剤師に期待される業務が調剤等の対物業務から、在宅医療を含む総合的な薬物治療管理・地域医療連携といった対人業務に移ってきていることがわかります。居宅訪問介護の現場では、介護チームに薬局の薬剤師が加わることによって、ケア環境のさらなる改善に大きな期待が寄せられています。

 東京都文京区の居宅訪問介護サービス事業者『カインド・ケア』で統括部長を務める木澤香さんは、日常業務と並行して薬局への介護関連事業の経営指導を行っています。この取り組みを通じ「薬の専門家である薬剤師が積極的に訪問介護利用者に関わっていけば、これまでの訪問介護とはまた違う成果をあげられる」と実感しているといいます。

 薬局は医療提供施設であると同時に小売業の側面も持っており、幅広いヘルスケア商品を取り扱い、地域の身近な健康サポート拠点としての役割を担っています。ただ、実際の介護の現場では、介護・福祉用品の品揃えそのものよりも、介護される人の状態に適した製品の選択や、その人にとって必要なものを提案できる知識が重要となります。「介護は誰しも経験しなければわかりません。介護される本人も家族もケア用品を知らない場合がほとんどで、選択する以前に介護用品の使い方すらわからないこともあります。私たちが現場へ入るとまず『オムツやパッド、使い捨て手袋が必要』と、介護・福祉用品を一つひとつ揃えていくことから始めます」。

 さらに介護チームには、介護される人やその家族の状態や現場の状況に応じた提案によってケア環境を整えていくことも求められます。その一例として木澤さんは、食べ物が飲み込みにくい嚥下困難な人の支援に活用される「とろみ剤」をあげます。「とろみ剤は原材料によってさまざまな味や食感があり、好き嫌いがはっきりと分かれます。『美味しくないから食べたくない』という方にとろみ剤の変更を提案したところ、状況が改善されて喜ばれたことがあります」。

 ただし、こうした提案も経済的な事情や介護される側がこだわることもあり、簡単にいかないケースがあります。カインド・ケア代表の江口亨氏は、「もともと介護職の成り立ちがボランティア活動にあって、その待遇や報酬に反映されていることもあり、国家資格者の介護福祉士でさえ現場で家政婦的な認識を持たれてしまいがちです。こちらが良かれと思って行った提案も残念ながら拒否されてしまうことが往々にしてあるのです」といいます。

 しかし、そうした場面で薬の専門家である薬剤師が説得力ある形で提案できれば、ケア環境を大きく改善できる可能性が広がります。「居宅訪問は薬剤師の方にとってはまだ新しい業務ということもあり、訪問薬剤管理指導に来られても、何となく居づらそうな印象を受けることがあります。薬剤師が介護現場のなかで信頼される立場にあると意識すれば、できることは多いと思います」と江口代表は指摘します。

 介護現場では実情を知れば知るほどケアの成果が上がります。「介護・福祉用品に限らず、例えばお風呂に入れない人には足だけ清拭する『足浴』を行います。また、寝たきりの方は肌が乾燥しがちなため、保湿効果があって香りの良い入浴剤を使うと喜ばれます。そうしたちょっとした気づきによる思いやりの提案が大切なのです」と木澤さん。また、「介護・福祉用品については実際に取り扱わなくても、総合カタログを備えて日頃から商品の特長を押さえておくだけでも十分参考になります」とアドバイスします。さらに踏み込んでオムツの交換から移動や食事の介助、清拭などを一通り学べる介護職員初任者研修を受講すれば、これからの薬剤師の職能にとって必ずためになると提案します。

 介護される人だけでなく、介護で疲れた家族やヘルパーに対してケアの視点を持つことも大切です。「ご存じのように、ヘルパーは激務で疲弊しているので、腰痛や肩こりに効く薬、栄養剤などを提案してもらえると助かりますし、そうして深まっていくチームの絆に働きかけることで『そろそろオムツが足りなくなりそうなので届けてもらえますか』といった日々の連携が強くなっていくのです」。

 江口代表と木澤さんは、薬局薬剤師の在宅医療・介護への参画には、「人生のラストステージにある人の生き甲斐を引き出したり、生活を豊かにできる業務の醍醐味を実感することが重要」と強調します。「私たちは以前、嚥下障害があってもう絶対に食べることができないといわれていた人に心を込めてお世話し、根気よく一口ずつ声かけしながら食事介助することで食事が楽しめる状態まで回復させたことがあります。こうした体験を通じてプロとして常に最善のケアを行う努力を続けています。これから在宅で活動される薬剤師の方にも是非、職能を発揮することで人の命を救ったり、生活の質を改善させるといったことを体験して、前向きに活躍の幅を広げて頂ければと思います」。この思いこそが、現場発の最も重要なメッセージと言えそうです。

(2018年2月掲載)
編集:薬局新聞社

トップページ