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「ケア・カフェ」で地域のケア事情をリード!

各地に広がる新しい多職種交流の可能性

薬剤師トレンドBOX#8

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 在宅医療参画や地域包括ケアシステムへの対応をめぐり、薬局薬剤師も地域の医療・介護・福祉の様々な専門職との連携が当然のように求められる状況となってきました。多職種連携は業務を円滑に進める必須の要件にして、薬局内から地域へと踏み出していく上での大きなハードルとも指摘されているところ。いかに患者・ケア対象者を取り巻く業務連携の輪に加わっていくかが重要なポイントになってくるわけですが、昨今そこで注目されているのが『ケア・カフェ』です。

 ケア・カフェとは医師や看護師、介護士、ソーシャルワーカーといった地域のケア関係者が職種を越えて気軽に集えるカフェのような場を設け、その名の通りコーヒーやお茶を楽しみながら寛いだ雰囲気で会話するという試みで、もちろん薬局薬剤師も参加対象に含まれます。緩和ケア専門医の旭川医科大学病院緩和ケア診療部・阿部奉之氏が2012年に北海道旭川市で実施した「ケア・カフェあさひかわ」が発端となっており、地域の高齢者介護や在宅医療・療養、福祉に対し、参加しやすいオープンな運営形態で多職種が意見交換を繰り広げる趣旨と可能性が共感を呼び、今や全国的な広がりを見せています。

アットホームな雰囲気の中で交流を深める(ケア・カフェあらお)

 Facebookなどで各地で立ち上がるケア・カフェを拝見すると、参加者同士が電気ポットや飲み物、テーブルなどを設営し合い、お茶菓子や軽食を持参したりといった和やかでアットホームな開催風景を窺うことができます。内容的にはテーマに基づいたグループディスカッション形式が主流ですが、“カフェ・マスター”と呼ばれる進行役はエプロン姿だったりと、業務の延長的な合同勉強会などではなく町のカフェでの寄り合いといった趣で開かれた交流が実践されているのが印象的です。

 薬局薬剤師の立場で2年前から「ケア・カフェあらお」(熊本県荒尾市)のカフェ・マスターを何度か経験している大森眞樹氏(城北中央薬局)は、「異なる職種同士がフラットな立場で日頃の業務での気づきや課題などを話し合い、顔の見える関係を築けることは非常に有意義です」との手応えを語ります。「どうしても協議会のような会合ではリーダー的存在の医師を中心として医療系の発言が主体になりがちですが、医療・介護・福祉職それぞれがケアに関するテーマに沿いながら対等に話せる雰囲気に導けることがケア・カフェの最大のメリットです」。

J-HOPの研修会でもケア・カフェの実践方法を紹介

 様々な職種と顔の見える関係を深める取組みは、薬剤師として知識や情報が得られるという以上に、「本当の意味でリラックスして話せる場だからこそ、互いの役割や業務を理解し合うことができ、より具体的な多職種連携に繋がっていくことを、会を重ねるごとに実感しています」と大森氏。そうして地域を支える関係職種のネットワークの活性化を導くことは、当然ながら地域のケア事情にとっても大きな成果になると言えます。

 「これまで薬剤師は医療職のなかでも受け身の職種と指摘されてきました。国や制度で動くのではなく、患者のために率先して動く姿勢をケア・カフェのような試みで示しながら、地域に1歩を踏み出す展開が広がって欲しいと思います」と、大森氏は自身が加盟する全国薬剤師・在宅療養支援連絡会(J-HOP)で専門の講座を担当するなど、ケア・カフェ活動の普及に努めています。

 運営マニュアルや参加の心構え、各地の開催状況などの情報はケア・カフェジャパンのホームページに集約されており、ここを基点に各地で取組みが芽生えています。実際の業務以前に、今後カフェ・マスターのような形で地域包括ケア体制に働きかける薬局薬剤師の姿が増えていきそうです。

お話を伺った大森眞樹さん(右)

ケア・カフェジャパン
http://www.carecafe-japan.com/

(2015年10月掲載)
編集:薬局新聞社

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