薬局内に本格的な運動器具を揃えて健康寿命延伸に貢献

「あしかが薬局」山形県山形市/高橋善三氏

JR山形駅から徒歩10分ほど、江戸時代に整備された東北二大街道の1つ・羽州街道を臨む住宅街に構えるあしかが薬局では、地域の住民が気軽に運動を楽しむ光景が日常的に繰り広げられています。2016年11月から店内に様々な運動器具を設置し、『あしかが元気クラブ』と名付けて会員制で運動ができる場を提供しているもので、入口脇の運動専用スペースに9つもの器具が並ぶ様子はまるでジムと見紛うほどです。

「私自身、50歳を超えた辺りから何度も腰を痛めるようになり、運動することで解消したいと思ったことが発端です。店頭で運動不足の人やお年寄りに運動するように提案しても、なかなか実践してもらえません。スポーツクラブなどは敷居が高いし、一般的なトレーニングと健康維持を目的とした運動は異なります。それなら薬局のなかで適切な運動ができればいいと思い立ちました」と、経営者の高橋善三氏は説明します。

あしかが薬局は明治10年創業と県内有数の老舗薬局です。4代目の店主となる高橋氏は、長年この地で住民を見守り続けてきた実績を地盤に、薬剤師会の役員を務めるなど医薬分業の推進に貢献しながら、「治療よりも予防、健康づくり=健康寿命の延伸」を薬局のコンセプトに据えています。「大きな医療機関のない住宅街なので、面分業では処方箋も近所に住む方が持って来られる程度。保健薬や健康食品、代々培う薬局製剤の相談販売を柱に細々とやっています」。そう高橋氏は謙遜しますが、かねてからOTC薬の販売でも薬歴や相談内容をカルテ化し、顧客一人ひとりに寄り添う親身な相談対応で多くの馴染み客から信頼を得ています。近年は検体測定室を導入して疾病予防の啓発にも力を入れるなど精力的で、2018年1月には健康サポート薬局の認定を受けました。

「経営的に直接メリットがあるわけではないですが、健康サポート薬局はこれからの薬局像だと信じています。超高齢社会においては何かあれば病院・薬といった感覚ではなく、国民全員がなるべく病気や要介護にならない意識を持つことが必要で、薬局も地域の健康寿命の延伸に貢献する役割が求められると思います」。病気や体調不良になってからではなく、健康を維持するための運動習慣に働きかける元気クラブは、そうした高橋氏の考えを形にした試みです。