薬局を基点に地域の関係性へと働きかける新感覚の地域密着経営

「ミコー薬局」福岡県糟屋郡志免町/古髙優子氏

事業継承とともに受け継がれる地域の薬局が果たすべき役割

 もともとミコー薬局では予防医学的な漢方・東洋医学の知恵や技術に基づき、病気を治すことよりも先に日頃から養生する知恵や考え方を地域に広げることを経営理念に掲げています。食養生の会もアトピーやアレルギーの子どもが目立つのに対し、母親を含めた食生活や体質改善に力を入れていたことが背景にあります。

 「薬局・薬剤師だから、薬がなければ何もできないというわけではありません。むしろ薬は最後の手段であって、薬局では日頃の生活習慣や食生活を正す方向に向けるお手伝いのほうが重要ということを父から学んできました。温灸や岩盤といった体験型のサービスを取り入れることで身近な相談の間口を広げることができ、さらに食養生の会や貸しホールといった地域への働きかけで少しずつ進化できている実感があります」。そんな古髙さんを父親の安川氏は、「昔は集客手段は口コミだけだったので、ネットやスマホを利用した情報の使い方には感心しています。地域に根付く薬局は本来、薬以上に日々の健康づくりのお手伝いが中心であって、その知恵や知識を広めていくことが我々の務めです。時代や方法は違っても同じ姿勢で頑張ってくれていると安心しています」と見守っています。

 長女が保育園に通い始めるようになり、子育てが一段落したことで古髙さんは薬局の事業継承の計画を進めつつあります。「父は生涯現役と言っていますし、父でないと駄目と言ってくださる方が多いため引き続き頑張ってもらいますが、私自身のお客さんや食養生の会などの地域の仲間も増えてきましたので、これからは事業主として薬局経営に力を入れたいと考えています」。

 盛況な食養生の会や町をあげたイベントに発展したマルシェイベントをはじめ、古髙さんが関わる地域活動の輪は順調な広がりを見せています。「自分が地域の中心になりたいというわけではなく、町の方々が元気になるように支援し、いきいきと輝く“人生の伴走”をさせて頂くことが大きな喜びです」。そう語る古髙さんの言葉は、すでに地域に根付いた薬局経営者としての熱意と矜持に満ち溢れています。

(取材実施:2017年1月)
編集:薬局新聞社