薬局を基点に地域の関係性へと働きかける新感覚の地域密着経営

「ミコー薬局」福岡県糟屋郡志免町/古髙優子氏

身近な薬局が地域活性化の中枢を担うことで“人も町も元気に!”

 自分なりの薬局を模索する過程で地元の若手経営者との交流も活発に行っており、薬局内カフェや母親同士の共助ネットワークへの取組みが町商工会から経営改革支援とビジネスアイデア表彰を受けるなど、地域活性化への刺激になっています。

 さらに新しい取組みとして、同じビルの3階に入っていたテナントの退店に伴い、空いたスペースで健康相談会や運動教室を運営しています。地域のイベントなどに安価で提供する貸しホール展開も開始し、趣味の集いや育児教室、各種セミナー、地元消防隊員による救命救急講習といった幅広い地域活動に利用され、数週間先までスケジュールが埋まるという盛況ぶりです。

 「私の子どもたちも上の階で習い事をさせているのですが、そのあいだ自分の時間が確保できるようになり、活動の幅を広げられたメリットがありました。地域の行事には極力顔を出すようにし、あちこちで知り合った人同士をマッチングすることで地域を盛り上げるのが楽しいです」と古髙さん。この貸しホールでは、町内の商店主との共同出店による地域マルシェ(市場)イベントを仕掛けており、2017年1月に開催した4回目からは地域活性化活動が認められ、行政の特別支援を獲得。町営施設での本格的な開催に結び付くなど、古髙さんの活動はまさに町興しの中枢を担っています。

 現在、県の子育て支援店に続き、地域交流や情報発信の拠点を担う全国的なネットワーク『まちの駅』にも登録しています。こうして積極的に地域との接点を広げ、人と町の情報が集まる場となることで「何かあれば気軽に質問したり相談できる」という存在感を発揮することで、古髙さんは今後の薬局に期待される地域の身近な健康サポート機能にも強い手応えを感じています。

 「薬剤師や漢方の専門家だからと上から目線にならず、その人の状態や望みをきちんと聞く姿勢と、一緒になって健康に良いことを引き出すような関係性が地域の薬局にとって大切だと思います」。ちょっとした体調不良や漢方相談、育児などに関する問い合わせにはSNSやスマホのLINEをフル活用し、「それこそ目を覚ましている限り24時間対応。お盆も正月もなくなっていますね」との苦労を語りながらも、「『あなたが居れば安心』と言って頂けることが有難いです。病気の人だけではなく、健康な人にも対象を広げたほうが経営的にはもちろん、地域でのやりがいも大きいと実感しています」との言葉には迷いがありません。