“村で初の薬局”で総合的な健康ステーションの理想を実践

「ほし薬局戸沢店」山形県最上郡戸沢村/星利佳氏

山形県北部の最上地方に位置する戸沢村は、県を南北に貫く出羽山地の合間に5000人余りの住民が暮らす集落。日本三大急流の一つとして知られる最上川に沿った風光明媚な土地柄の一方で、最も近い新庄市には車で山間を30分ほどと都市機能から隔離された生活環境にあり、つい最近まで“無薬局地区”となっていました。そんな村で2014年7月、唯一の診療所が医薬分業に移行することに伴い、初めての薬局として開業したのが『ほし薬局戸沢店』です。

「実はお話を頂いた時は他に支店を設けたばかりだったのですが、このような村の環境でこそ、かねてから思い描いていた地域の総合的な健康ステーションとしての薬局運営が実現できるのではないかと開業を決心しました」と、経営者の星利佳氏は思い入れを語ります。

星氏は新庄市で父親から継承した薬局を営んでおり、プライマリ・ケア認定薬剤師や最上地域在宅ケア推進委員としての活動を軸に、調剤から身近なヘルスケアの相談応需、在宅医療まで業務を拡充。早くから薬局に管理栄養士を採用するほか、自らもケアマネジャー資格や認知症ケア専門士などを取得しながら地域の医療・介護・福祉にまたがって精力的に活動する様子に、支店の立ち上げに続けて究極の地域密着経営とも言える村の薬局で理想の実現に挑んだバイタリティが窺えます。

薬局が無かったという以前に、「商店自体が少なく日常の買い物にも苦労するような環境」において、薬局では診療所の調剤に限定せず、当然のようにOTC薬やサプリメント、衛生用品を豊富に取り揃えています。「気軽に相談などに立ち寄ってもらえるように」と、店内にはゆったりと寛げる囲炉裏風の凝った休憩スペースを設置。また、新庄店と同じように栄養士を常駐させて食生活を含めた幅広い健康相談に対応するなど、店頭に掲げる“町の健康ステーション”の理想に基づいた都心の先端的な薬局にも引けを取らない佇まいと機能が目を引きます。

取材中に来店された患者さんと